Love Slave
私の小さい胸がバクバクと蠢き出す。


今のアル君に、14歳の面影はない。
一人の男として見える。愛らしい外見から男気を感じられる。


私は彼への目線を逸らす。


「そ、それにしてもここどこだろうね!?」


「部屋からすると、街外れにある、今は使われていない倉庫の中でしょう」


会話はそれで終了してしまった。
微妙な空気が流れる。


(どうしよう、なんか変に意識しちゃうよ~)


もう、用心棒どころの話ではなくなってしまった。


「もとかさん」


「は、はい!!」


名前を呼ばれて声が裏返った。ばっちりと目が合う。


「僕だって男です。もとかさんの身にもしものことがあったら、身を挺して守ります」


さらに胸がドキューンと火縄銃で撃たれた。
そんなセリフ、何処で覚えた。恋愛シュミレーションか!?


バタン!!


「おう、やっと起きたか」


浮かれ気分が台無しにされた。
私達の前に現れたのは、見るからにこの一帯を治めるギャング風の男。


「あなた誰?僕達に何の用なんですか」


アル君の質問に男は大口を開けて笑った。


「何の用だ?決まってるだろ、アンタらを閉じ込めるのが俺の仕事だ。ある依頼主からの命令だ。『コンサートが終わるまで閉じ込めてろ』だってさ」


やっぱり、吾妻梓の仕業だ。ギャングを雇って自分は出てこないなんて卑怯な奴!


「つまり、これもいらないってことだよな」


「僕のフルート!」


男が取り出したのは、お祖父さんがアル君に作ってくれた最高傑作と断言していたあのフルート。
< 214 / 281 >

この作品をシェア

pagetop