Love Slave
学校には電車とバスを使うよりも40分早く着いた。しかもお金も浮いた。ラッキーと言えばラッキー。


(って、そういう問題じゃないでしょ)


車に乗った=コイツの奴隷になったって言っても過言じゃない。もちろん、そんなものになった覚えはない。


こんな奴の奴隷なんて、死んでも無理‼


安元がドアを開ける。校門の前には生徒達が集まっていた。


「会長の御登校よー!!」


「きゃー、大和様!!」


会長はニコッと笑って手を振る。女子生徒のテンションはMAX。


(やばい……すっごく降りづらい)


完全に気迫に押されてしまっている。

私が躊躇してもたもたしていると、会長が腕を引っ張って車から降ろされてしまった。その表情は女子生徒に見せた笑顔ではなく、殺意を感じる笑みだった。


「うわっ、嘘でしょ!?」


「マジかよ!」


予想通りの反応。私は下を向く。生徒たちは会長のために道を開ける。でも、私はおまけ。


「あの子が例の生徒会新メンバー?」


「1年C組早乙女もとかだって」


たった一日で有名人になってしまった。ずっと陰日向で暮らしてきた人間なのに。
名前なんてすぐに忘れられる存在のはずなのに。


「どんな子かと思ったら、普通の子じゃん」


「メガネにボサ頭、ダサッ!」


本人は聞こえないように言ってるみたいだけど、私の耳にはしっかり入っている。分かってるよ、それぐらい。一般ピープルで地味子の私がこんな男と一緒にいること自体が大きな間違い。


「大和、おはよう」


昇降口の前のイチョウの木の下で他の生徒会役員の3人が立っていた。真っ先に挨拶してきたのは長髪をポニーテールにしたメガネの人。爽やかな笑顔が印象的だった。


「おう、今日は俺が最後か」


「うん、これで生徒会役員全員揃ったね」


終始ニコニコしている人。私が会長の陰で身を潜めていると、彼が私の存在に気付いた。
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