Love Slave
「よし! 本日の作業終了!!」


どうやら終わったらしい。
結局、他の2人にも手伝ってもらった。私が間違えたりしなければ、もっと早く終わっていただろう。
罪悪感に苛まれながらも地道に作業を進めた。


時間は6時近くになっていた。まさかこんなに遅くなるとは。


(やっと終わった……)


私は肩を揉み、一息ついた。地味な作業でも体に堪えた。翌日は筋肉痛になっているかもしれない。

結局、会長は一度も会議室に顔を出さなかった。
肩凝ってるって言うから揉んでやったのに、仕事なんてしてないじゃないっ。


「疲れた?」

真横から副会長がひょっこり顔を近づけてきて、ビクッと肩が震える。


「は、はい! 生徒会の仕事って大変ですね」


副会長はそうか、と言って服から何かを取り出した。


「はい、君にプレゼント フォーユー」


渡されたのは一輪の薔薇だった。しかも、蕾。


「薔薇の蕾の花言葉は『可愛らしさ』。可愛い君に、そして生徒会の蕾よ。これからもよろしく」


何だかとってもフェミリストな人だなって思った。苦笑いを返しつつ、蕾の薔薇を受け取る。


「さあ、家まで送るよ」


「え!? いいですよ」


「だめだめ!! 可愛いレディを一人で帰すなんて僕にはできないからね。裏門に車出してあるから、おいで」


裏門に行くと、副会長の車はロールスロイスだった。行きはリムジンで帰りはロールスロイス……。一体生徒会メンバーはどんな生活をしてるんだ?


車の中で副会長は生徒会のことを話すと思いきや、旅行先であった出来事を話してくれた。これまで、30カ国以上は回ったという。
やっぱり、庶民とは違う。


イタリアで引ったくりに遭った女性を助けるために犯人を跳び蹴りしたことやナイヤガラの滝の美しさなど、話は面白可笑しくて何度も笑った。
気づけば家の近くまで車を寄せていて、私は通学カバンを胸に抱く。


「じゃあ、また明日。お疲れ」


「今日はありがとうございます。お疲れさまでした」


私は家に帰るとすぐに押入れから小さな花瓶を引っ張り出した。
水を汲み、副会長からもらった薔薇の蕾を部屋の窓際に飾る。


「副会長は……良い人だったな」


ちょっとクセがあるかもだけど、会長と比べたら雲泥の差だ。
私は頬杖を付きながら、月明かりに照らされる薔薇の蕾を眺め、今日一日の疲れが癒されていくのを感じた。
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