Love Slave
「1,2,3,4……」


5回になるところで途切れてしまった。ボールが近江さんの足元に転がる。


「結構レシーブ保つの難しいね」


「そうだね……」


相手は苦笑いしているが、こちらとしては笑えない。ラリーが続かないのは私のせいだ。イライラしていても無理はない。
私は疑問を背負いたくはなかった。だから、思い切って聞いてみた。


「あ、あの……どうして私なんかとペア組んでくれるの?」


「どうしてって、一人だったから」


それが理由? 同情とは思えない。


「クラスから孤立しちゃってて、私みたいな人間が入っちゃったから……」


「それって生徒会のこと? まあ、そうだろうね」


ハッキリ言われた。やっぱり、そう思っていたのか。自分で言ったとはいえ、傷つく。


「でも、確かに生徒会執行部はこの学校のアイドル的存在だもん。その中で、一般コースで且つ女子であるあなたが生徒会役員に選ばれるなんて異例中の異例よ!!」


目を輝かせながら言った。何だか選ばれし人間みたいな言い方だ。さらに彼女はニヤニヤしながら近づいてきた。


「ね、会長ってカッコいいよね」


「うん、そうだね……。会長ってそんなに人気なの?」


「何とぼけたこと言ってんのよ! あんな美少年軍団何処捜したっていないわよ。と・く・に会長のカッコよさはピカイチなの!」


そんな私は会長の奴隷ですなんて言えない。顔はカッコいいけど、裏の顔はドス黒いのなんのって。


「羨ましいな、本当。会長のそばにいられるなんて……」


近江さんの頬が紅潮していく。この反応に鈍い私でもピンときた。


「もしかして、近江さん……会長のこと……」


「ぎゃー、言っちゃダメ言っちゃダメ!!」


口を塞がれて、彼女はパニックになる。さらに赤面していて、この態度で丸わかりだ。


「こらそこ! 私語は慎む!」


先生に怒られてしまった。二人してフフッと笑う。
彼女から「今の内緒ね」と口唇に指を当てた。出会って間もないはずだが、秘密の共有。
もちろん、うん、と頷く。


そして、


「今日、お昼一緒に食べない?」


帰り際、ご飯に誘われた。
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