Love Slave
ビタ―――――――ン!!


「へぶぅっ!!」


大きな音を立てて顔面強打する。本日2回目、今度は鼻の先を少し擦りむく。鼻の天辺がヒリヒリする。


再び公衆の面前で醜態を曝してしまう。
恥ずかしさのあまり顔を上げられないでいると、遠くのほうからプツンとテレビの電源が切れたような音がした。


何だろう、振り向くと椚先輩は表情に変化なしだけど、2人の顔は凍ったように表情が固まっていた。


パソコンの画面が真っ黒。それ以外の機械も。
引っかかったコードの先を見ると、コンセントが抜けていた。

「……データ、全部吹っ飛んだ」


副会長の一言に凍り付く。


今まで集計した決算や議会で使用した文章など総て抹消されてしまったというのだ。


私は突っ伏した状態で唖然とする。コードに引っかかったせいで主電源が切れ、データは全消し。
血の気が一気に吹っ飛ぶ。とんでもないことをしてしまったと。いくら新人とはいえ、こればかりは謝って済む問題ではない。


周りが暗くなる。目の前も、今いる現実の目の前も。
私の前に椚先輩が足を止めていた。見上げると、巨人の様だ。
相変わらず無表情で2人と違って顔色の変化はないけど、感情は剥き出しに見えた。


「……やる気がないなら帰れ。アンタがいても足手まといだ」


心臓にグサッと槍が無数に刺さった気がした。その重低音な声は私の心を破壊するには充分な威力を持っている。


言葉が出てこなかった。


「おい、要! 言いすぎだぞ!!」


また副会長がすかさずフォローしてくれたけど、喜べなかった。言い訳なんてできない。全部私の不注意のせいだ。
私は顔もろくに上げずに立ち上がる。


「……ここにいると迷惑なので、帰りますね」


ペコリ、とお辞儀してこの場から出ていく。副会長が「待って」と言っていたけど、振り返ることができなかった。


下を向きながら廊下を走り抜け、生徒会棟から出る。


一般コースの校舎の裏門にある木の下まで来ると、我慢していた感情が一気に噴き出す。
頬に大量の水滴が転がり落ちる。
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