Love Slave
あっさり見つかった。当たり前かもしれないけど。
すっかり観念して、うつむきながらそっと中に入る。


机に近付いて、資料の詳細を知る。
昨日まとめたものだった。よく見ると大きなハンコが押してあったり、赤ペンで修正が入っている。


つまり、会長が最終チェックをしていたのだ。


「よし、終了~」


会長が気持ち良くenterキーを押す。ヴ―ンとコンピュータにインプットされる。


「出来たぞ」


「え?」


「え? じゃねぇよ。お前、データ全部おちゃかしちまったんだろ? 今、全部直したから」


「か、会長が全部データ作ったんですか!?」


「何だ、その意外そうな反応は。会長でありながら、遊んでばかりいる男だとでも思ったか」


「い、いいえ。そんな訳じゃ……」


胸の前で両手を振り、視線を足元に落とす。


短時間で膨大なデータを作り直したというのか。私はジャージの裾を丸めながら言葉を発せられずにいた。


(私、会長を誤解してた)


本当はサボってるんじゃないかって。会長はきちんと仕事をこなしていた。思い込んでいた自分が恥ずかしい。


「あの、私……」


「辞めたいとでも?」


先に言われた。椅子を回転させて横向きになり、すくっと立ち上がる。


「言ったはずだ、お前は俺の奴隷だ。俺が許可しない限り、辞めることはできない」


「だって……」


「だってもそってもねぇ。それから、お前の制服が発見された」


ジャージを着ているとはいえ、何で会長が盗難されたことを知ってるのだ。巡回中の警備員によって一般コースの焼却炉の前に発見されたのだと。
その制服を見せてくれた。ブラウスもスカートも袋ごとはさみか何かでビリビリに破かれていた。


「そんな……」


これでは買い直さなければ。でも、制服は高い。親になんて言えばいいんだろう……。手違いで破いたなんて言い訳にもならない。


「これでは買い直さなければならないな」


会長はガタッと椅子を引いて立ち上がる。コツコツと靴音を鳴らし、私の真ん前で足を止めた。


「会長……?」


もしかして、買い直してくれるとか? 

なんせ、この学園の最高権力者であり、生徒会長だもの。奴隷とはいえ、生徒会庶務としてやっていけと言ってるんだから制服を新しく用意してやるの一言ぐらい言ってくれるはず。


「脱げ」


「……へぇ?」


会長の一言が頭に入らず、ポカンと口を開く。
しかし、会長は真顔のまま同じ言葉を繰り返す。


「俺が脱げと言っているから、脱げと言っている!」
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