Love Slave
「も、もとかちゃん!?」


「全然気付かなかったです」


「………」


「というか、本当に分かんなかったんですか?」


驚愕の反応2名と無反応1名。こんな姿をしている自分にも驚きだが、周りの反応にも驚愕してしまう。
奥の部屋から会長が高笑いしながら出てきた。


「はははは。諸君、相当驚いているようだな」


「大和、一体どういうこと?」


「まあ、話すと長いんだが」


会長は余裕綽々で、隣で聞いていてげんなりしてしまう。




私は会長に襲われた(?)後、拘束され、車に乗り込まれた。
何処に行くのやらと思えば、我が家。堂々と入るものだから、「不法侵入ですよ!」と注意すれば、


「まずは身近から処理だ」


何ということだ。母も母で、「イケメンが来た、イケメンが」と言って熱狂的ファン並みに大はしゃぎ。ずかずかと家に上がってきたのにあっさり受け入れている。頭が痛くなってしまった。


会長は私の部屋に押し掛け、クローゼットの中を荒らし始める。


「これもダメ、これ色褪せてる、この服はほずれてる」


持参していたゴミ袋に私の私服を躊躇なく捨てていた。
非常識な行動に目を剥く。


「何てことしてるんですか!?」


「全部変えるんだよ、お前も含めて」


「変えるって……」


「名付けて『地味子脱出大作戦』!!」


何処かのテレビ番組をもじったような作戦名を高々に宣言する。


私の私服は会長のコーディネイトにより、総てブランド物になった。生徒会は私服登校可だからこれで来いと言われた。


ボサボサの髪も、会長行きつけの美容院でセットしてもらい、プロのメイクアップアーティストの方にメイクまでしてもらった。


最後にメガネを辞めろと言われた。コンタクトは苦手で嫌だと言ったら、


「メガネもコンタクトもいらねぇ、レーシックだ」


視力を良くするという手術を受ける。すると、今までぼんやりとした世界が鮮明に見えるようになった。その時、私のメガネの厚さにも驚いた。こんなに度が強いのをしていたのかと。


全身鏡で自分の姿を見たとき、メンバーと同じく、見違えった。


これが私、私だっていうの?

鏡に映る自分の姿は、数時間前と比べると別人にしか思えない。
言わば、継母と義姉から灰かぶり小娘と罵りられていたシンデレラが魔法でお姫様に変身したと言ってもいい。


総て会長の自腹というのも驚きだ。ブラックカードで支払っていたので、「どれくらいかかったか分からない」と言っていた。


(金持ちって、お金の管理してないの⁉)


驚きを通り越して呆れてしまう。
金持ちの思考なんて、一般市民の頭では計り知れない。
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