ボクがキミをスキな理由【短編集】
私の目の前では、穏やかで優しい表情をしていたのに。
「話はついたみたいね。
早く車に乗りなさい、仁。」
「…了解。」
カレンさんの前ではうって変わったふてぶてしい態度。いつも真面目で穏やかな彼が見せるその表情は、まるで他人のもののようで。私は不思議な気持ちになりながら彼の一部始終を見守っていた。
「要件は車の中で聞くよ。ここでは話したくない。」
「ま…、そりゃそうだわね。」
そう言ってカレンさんは私にチラリと視線を送る。
「じゃ…、俺行くね。
気をつけて帰ってね、星野さん。」
「う…、うん。
成宮くんも。」
それだけの言葉を交わすと、成宮くんは車に乗りこんで、颯爽と私の目の前を去っていってしまった。