ボクがキミをスキな理由【短編集】
小柄だけど逞しいその腕に抱かれながら、あたしは不思議な安心感に包まれていた。
男なんて所詮は寂しさを埋める道具で欲望をぶつけ合うだけの存在だと思っていたのに。
何故だか彼の腕の中は心地よくてホッとした。
彼がトイレから連れて行ってくれたのはフロアーではなく、従業員の休憩室だった。
休憩室のソファーに私を寝かせると、彼は近くにあった毛布を私にかけた。
ここに連れてきてくれた…ってコトはクラブのスタッフなのかな……。
なんて朦朧とするアタマで考えていると
「なに、どーしたの亮介。」
30代前半の遊び慣れしていそうな男の人が彼に声をかける。
「別に?なんかチャラそうな男がこの人潰してヤろうとしてたから…。
助けただけ。」
彼は不機嫌そうな声を出してそう答える。
「ふーん。
まあ、この子可愛いし尻も軽そうだし…。目ェつけられんのもわかる気がするけどなあ…。」