ボクがキミをスキな理由【短編集】
ドンドン!
ピンポーン!
部屋の中に鳴り響く、騒音
それらをBGMにしながら
玄関までの十数歩を
雲の上を走るみたいな感覚で
ゆっくり走る
速くたどり着きたいのに
なかなか思うように走れない
もどかしい気持ちを抱えながら
玄関にたどり着き、
「レイさん!レイさん!」
必死な彼の声が聞こえる扉の鍵を
ガチャガチャと緩める。
化粧もしてない
戦闘服に身を包んでもいない
ただの上原レイ
どこも着飾らない
ありのままの、あたし
普通ならこんな姿で好きなオトコの
目の前に現れるなんてありえない。
でも……
余裕がないのは
カレも同じだったんだ。
震える手でガチャガチャと鍵を開けて
勢いよく扉を開けると
「やっぱりいるんじゃん。
どこまで居留守使う気だったの?」
あたしの目の前にホッとした様に
安心したように微笑む、
亮ちゃんの姿が現れた。