ボクがキミをスキな理由【短編集】
「1度きりでいいんだ。
この後もモデルをお願いするなんてコトは絶対にしない。一度だけ…、一度だけ、俺にチャンスをくれないか??」
懇願するように
必死の声色で
私に訴えかける、潮見さん
私は受話器を握り締めたまま
少しだけ考える
お父さん、お母さんは
私の慌ててる姿に何事かと驚きつつも…
無関心を装って
私の様子を伺っている。
“自分のコトは自分で決めなさい”
というのが基本的な方針の我が家
きっと、私がこういう目立つお仕事をしても“沙良が自分で選んだことなら”と了承してくれるに違いない。
弥生も葉月も…
きっと応援してくれるだろう。
でも…
成宮君は??
自分のカノジョがこんな目立つことしたら、不快に思わないかな。イヤだなって…思わないかな……。
一番心配なのはカレのキモチ。
誰よりも何よりも、彼に嫌われたらと思うと、おっかない。
家族よりも
トモダチよりも
カレに嫌われたらと思うだけで、
怖くて、涙が出そうになる。
嫌われたくない。
誤解されたくない。
カレだけには――……