ボクがキミをスキな理由【短編集】
はぁ~。
コイツに愛だの恋だの語っても
無駄なんかもしれへんなぁ…
そもそも
人に恋した経験のない、太一
そんなヤツに
俺の心境を察しろって方が
きっとムリなんやろなぁ…。
太一の顔を見ながら
ガックリと肩を落とすと
「で、その後アンナさんとはどうなったわけ??」
じっと事の成り行きを聞いていた拓海が、ウィンクしながら俺の肩をポンッと叩く。
――うーん。
コイツ、いい仕事しよるなぁ…
コドモでオコチャマな太一とは対照的に、純情だけど精神的にはオトナな拓海。
拓海が発してくれたナイスフォローに感心しながら
「その一週間後の週末
俺はアンナに貰ったフライヤーを頼りに、ジャズ喫茶に行ったんや。」
と、ポツリポツリと話し始める。
アンナが歌ってる
ジャズ喫茶の店の名前は
club:espressivo
(クラブ:エスプレッシーヴォ)
イタリア語で“表情豊かに”
という意味があるのだと
その後アンナに教えてもらった――……