ボクがキミをスキな理由【短編集】


ピアニストに
ベーシスト
そしてドラマーを引き連れて
真っ白なドレスに身をつつんだ
アンナが現れる。



大きな拍手の渦の中



アンナはニッコリと微笑んで
マイクに手をかけると


メンバーが準備できたのを確認して
柔らかに歌い始めた。





アンナが選んだ曲は……


星に願いを





ソレはどんな人でも知っている
スタンダードなナンバー



透明感のあるアンナの声に
ソレを支えるリズムセクションの
安定感



美しいコード進行に
巧みなアドリブ



最初はざわついていた店内も
アンナの歌に次第に酔いしれ
誰も言葉を発さずに
カノジョの音楽を見守っている




耳の肥えた今なら
もっと違う聞き方が
できるんやろうけど…



あの時の俺は
必死やった



俺の恋した
美しい天使の歌声を
一音たりとも逃すまいと



必死になってカノジョの音楽に
聞き入っていた。



< 345 / 461 >

この作品をシェア

pagetop