ボクがキミをスキな理由【短編集】
その目は、もう会えない“誰か”を思い出しているようなそんな目で、俺をたまらなく不安にさせたことを覚えてる。
もう冬が来て
白いワンピースからベージュのコートに変わった、アンナの服装。
アンナの願う男に
理想の男に近づきたいと
毎日毎日、努力を続けてきた、俺。
でも、俺には敵わない“誰か”の存在が見えた、三日月の夜。
――怖かった。
いつか誰かに
アンナを奪われてしまいそうで
俺の知らない“誰か”が
俺の目の前から、アンナを奪い去ってしまいそうで
儚く夜空を見上げるアンナに、俺は言いようのない不安を抱いた。
夜空を見つめるアンナの隣にちょこんと座ると、俺はアンナのカラダを抱きしめる。
アンナがこの場所から逃げていかないように
強く強く抱きしめた。