ボクがキミをスキな理由【短編集】
『性欲と食欲はよく似てる』
アンナと俺の唇が
名残惜しそうにそっと離れて
言葉もなく見つめ合っている最中
考えていたのは
アンナの言った、あのセリフだった。
――ホンマや。
カラダはココロより正直で
本能は理性より物知りや。
おいしい前菜を食べた後、
そのまま席を立って
サヨナラなんてできるはずない。
その次、またその次と、
どんどん味わってみたくなるのが、
人間の性(さが)。
「レオのキス、素敵ね。」
「へ??」
「さらっとしててしっとりしてて、気持ちいい唇。」
そう言って、アンナは俺の唇を親指でスゥッと撫でる。
「レオ。」
「…ん??」
「今度はゆっくり味わいましょ?
お互いのカラダの隅から隅まで。」
その言葉を聞いて
「ヘタでも幻滅せぇへん??」
勇気を振り絞って訊ねると
「バカね。
テクニックなんてなくても、カラダの相性だけで天国にいけるわ。」
そう言って
アンナは俺をゆっくりとベッドに押し倒した。