ボクがキミをスキな理由【短編集】
⑥NO PAIN NO GAIN
バーカウンターを横切って、木目の扉をギイッと開くと、そこには小さなテーブルと小さなソファー。
そして、ステージ上のアンナを写し出すモニターが配備されていた。
気になってモニターを覗きこむと……
ステージの上のアンナはwhisper notを歌い終わり、次の曲を表情豊かに歌い上げている最中だった。
「ステージが終わったら、アンナへはここに来るように言っておくから安心しなさい。」
そう言って
俺をソファーに座らせるとマスターはニッコリと微笑む。
「でも……
会ったところで、どうすればいいんやろ……。」
「どういう意味だい?」
「話し合ったところで、何か解決するんかな。
話し合っても俺とアンナの歳の差と経験の差は変わらへん。それなら……、どんなに話しても平行線。
何も生み出さへん話し合いに意味なんてあるんかな……。」
ソファーに座ったまんま
頭をグシャグシャと両手でひっかいて、ため息混じりに呟くと
「それは話してみるまでわからない。」
マスターは俺の肩を叩きながら、そう呟く。