ボクがキミをスキな理由【短編集】
「レ…オ……」
初めて噛みついた
かわいい仔犬
アンナの目には
動揺の色が色濃く残っている
「同情なんて俺はいらん!
欲しいんは同情なんかじゃなく、あんたの愛情や!!」
柄にもなく動揺してる、アンナに
怒り狂う、俺
そんな二人を月だけが見ていた
糸のように細く輝く
下弦の月が
俺たちをずっと見ていた。
「俺が欲しいんはあんたの心とカラダの全部や。1ミリでも迷いのある心なんて俺はいらん!」
泣きそうなのを我慢して
今にも逃げ出したいのを我慢して
チャリンコから手を離して、
俺はアンナを抱きしめる
正面からギュッとギュッと抱きしめる
ドサリと道路の上に倒れる、自転車の音を聞きながら
「アンナ。
俺を選ぶならあの人の全部を捨ててきて。」
そう彼女に懇願する。
「あの人の影を捨てられへんなら……、もうこれっきりサヨナラや。」
「レオ……?」
困惑するアンナのカラダをギュッと力強くだきしめて
「あの人の影を追いかけて……
これ以上あいつのコピーロボットやらされるなんて、まっぴらごめんや……!!」
そう耳元で囁くと
俺は倒れたチャリンコを起こして
思いっきりペダルを踏みこんだ。