ボクがキミをスキな理由【短編集】
あの人……
アンナが譲さんと呼ぶあの男
あいつの言動
身のこなしに
ウィットに富んだ会話
それらの全てを間近で見せつけられて
俺がアンナに教え込まれた“イイオトコの定義”は、あのオトコのコピーだったんやと思い知る。
頬に突き刺さる風
ゴオオとうねる海鳴り
闇夜に猛スピードで駆け出す、俺
海岸沿いの道路を
猛スピードで突き進みながら考えてたのは……
この期に及んでアンナのことばかり。
『ディナーを心地よく過ごせたオトコとは…オンナは寝てみてもいいと思うものよ?』
『本当に人格も何もかもが素晴らしい一流の男はね??
どんな人に優しい、自然体な人。
本当に力のある人はね??自分より立場が下でも、上でもどんな人にも愛を忘れたりしないものよ』
アンナの言う理想のオトコ
それはやっぱりあの人なんやろうな……。
カノジョが淋しそうに月を見上げるあのしぐさ
俺はアンナの、あのしぐさを見るたびにたまらなく不安になった。
俺以外のことを考えているであろう、アンナがたまらなく怖かった。
なぁ、アンナ
あの時あなたは誰を想ってたんや??
家族?
トモダチ?
それとも…譲さん??