ボクがキミをスキな理由【短編集】
「ごめんなさい、レオ。
あなたが譲さんの世話になること、死ぬほど嫌がるってわかってはいたんだけど…私怖くて。
私1人が抱えるにはこの問題は重すぎて…
ホテルに電話をかけて譲さんに相談したの。」
アンナはそう言って…
肩を小さく震わせて、ワンピースに大きな涙のシミを作っていた。
「アンナ……」
初めて見せたアンナの涙
その涙を零させたのは、
自分なんだと思うと
ふがいなくて、情けなくて
せめてカノジョの涙を拭ってあげようと手を伸ばすと
「い、いだぁっ!!!!」
その瞬間
俺のアバラがギシギシ痛んで
つんざくような痛みが
体中を襲う
そんな俺の悲痛な叫びを聞くと
「れ、レオ!?」
アンナは相当心配そうな表情で俺に近づく。
――うぅ、情けない
こんな時でも
俺はアイツに勝たれへんのか…
キレイなキレイなアンナ
誰より美しくて
誰より自由で
誰よりも優しい
オトナなフリした
ただの臆病な女の子
俺が恋したアンナを作ったんは、きっとアイツなんやろう
恋愛仙人で
ボディートークが大好きで
ホンマに24歳かと思うほど
達観した価値観を持つアンナ
音楽に精通してて
政治や経済、それにアートにも深い造詣を示すアンナ
それに…
美しい装いと美しい振る舞いで
誰もを虜にしてやまない、アンナ
15歳の俺が体中で
ココロの全部の愛を捧げたアンナ
あの時の俺は事故の痛みで弱気になってたんかなぁ…
アンナが心配そうに俺を覗き込む顔を見てたら、なんだかいてもたってもいられない気持ちになって。
俺のライバル“譲さん”がどんなヤツなんか知りたくなった。
「アンナ…」
「ん…??なぁに?レオ。」
「エスプレッシーボで言ってた“話を聞いて”…ってくだり、今も有効??」
「…突然どうして?レオ。」
不可解そうな表情を浮かべたアンナに俺は真顔でこう答えた。
「ちょっと…知りたくなったんや。
あのオッサンのことが…な??」