ボクがキミをスキな理由【短編集】
そして……
病室から見える下弦の月をチラリと見ると、アンナは静かに語り始める。
譲さんとの出会い
譲さんとの生活
そして、彼に芽生えた恋心
一線を越えた、三日月の夜のこと
家を出た日は今日のような三日月の夜で、この月を見るたびに彼を思い出してしまうのだということ。
小さなライトに照らされた病室から
覗く、細い三日月
譲さんとの関係
譲さんとの年月
ガキな俺には太刀打ちできない、二人の絆
聞けば聞くほど、俺はアンナの心に巣くう譲さんの存在が憎らしくなる。
だってそうやろ?
8歳の時からそんなイイオトコと生活を共にしたら、アンナの男の基準はどう考えても譲さんになるわけで。
顔よし
財力申し分なし
センスよし
性格よしなんて……できすぎやろ!
それ以上のオトコの存在なんて、かなり希少やろ!
絶滅危惧種並みに希少やろ!!
アンナの心に巣くう譲さんの存在にガックリしながら、ハァ~と大きくため息を吐くと
「でも……
私は譲さんの所には帰らないから。」
涼しい顔して涼しい声で
アンナは俺に、そう言い切った。