ボクがキミをスキな理由【短編集】
「アンナ。
俺は言うたハズやで?
俺を選ぶんなら譲さんの全部を捨てて来いって。」
ピッピッという電子音だけが聞こえる空間で、俺は静かにアンナに語りかける。
窓の外に広がる満天の星空と紺碧の空
そして下弦の月
俺はそれらを見ながら、ギュッとコブシを握り締める。
「アンナ、俺はそんな中途半端はイヤやねん。」
勇気を振り絞ってそう言うと
アンナは凍りついたような表情で俺を見つめる。
静かな静かな
俺とアンナだけの空間
2人の間にいつも流れていた潮風のメロディーはもう何一つ聞こえない。
潮風の代わりに聞こえる、無機質な電子音の中で
「アンナ。
俺が好きになった女はそんな弱虫なオンナやない。」
「……。」
「いつだって風のように自由で、雲のように柔らかで、海のようにおおらかな最高のオンナが新場杏奈…やろ??」
「………。」
「大丈夫や、アンナ。
誰にも遠慮なんてする必要ない。
思うが侭に譲さんの胸に飛び込んだらエエねん。
ワガママに自分勝手にぶつかっていったらエエねん。
ホンマに欲しい男は俺やない。
……譲さん…やろ??」
俺は悲しい別れの言葉をやっとの思いで紡ぎだす。