聞こえるよ、



「あの、これ…」




拾って渡そうとしたのに振り向かない。
何なの。せっかく拾ってあげてるのにっ




「あのっ!」




…全然振り向かない。
聞こえないわけ?!
それとも無視?!ふざけんなっ




「あの!すいません!」




ちょっと怒りながら肩を引いて
こっちに向けた。

そしたら「え?」みたいな顔して
私を見ている。
…まじかこの男。




「これ!落ちてましたよ!」




きつめな感じで言ってやった。
そしたら顔をはっとさせて鞄から
紙とペンを出した。

そして紙に「ありがとうございます」と
書いて軽くお辞儀した。

…この人、耳が聞こえないんだ。

無視とかじゃなくて聞こえないだけなんだ。
…うわ、私最悪な奴じゃん。




「いいえ…」




ストラップを渡すとまた少しお辞儀して
歩いていった。

と、思ったら私のところに来て
また紙に何かを書き始めた。




「…『あげます』?」




そう読むと頷いてさっきのストラップを
くれた。



「い、いりませんよ!そんな」




ストラップを私に握らせて
笑顔で帰って行った。


 
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop