汝、風を斬れ

 この反乱を起こした張本人は、軍の公募に応えて試験を通り、軍人となった。その類い希なる戦闘技術は天性のものとしか思えず、みるみるうちに彼は頭角を現した。周りからの信頼厚く、出世は早く、しかし奢らず、やがて国王と目通りするまでになった。歳の近い王からも信頼され、何か頼まれれば処理早く、また確実で、内密な相談を受けるようにもなった。様々な処への立ち入りを許され、そして知ってしまった。隠されるようにして保管してあった資料の中から、裏王家という存在を。そして、それが自分の祖先だということを。

 そこには裏王家の打ち出した国策が事細かに述べられている。何百年も前の策だが、それが間違っているようには軍人の自分には思えない。そして、裏王家を虐げた王家の仕打ちを知った。存在の否定と隠滅というひどいこと。


 王家の者、髪は淡い青、瞳は湖の底の色。
 裏王家の者、髪は輝く緑、瞳は森の奥の色。
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