汝、風を斬れ
第十章 転送
「セント……」
「謀反の首謀者は将軍、いや、俺の親父、ヴェルズ・ソーザ。そして俺は……裏王家の末裔になる」
 いつもの飄々とした態度を作りたい。でも、作りたいのにできない。それは、受け入れがたい真実で。

 セントの表情を知るには、下からのぞき込むしかない。一度顔をあげたきり、セントは再び俯いている。

 信じがたい昔話。
 すぐに受け入れられないのは、王家であるキュアも同じであった。自分の先祖はそんな非道いことをしたのか、と。

「セント」
 キュアはもう一度セントを呼んだ。

「セント」
 ジンも声を掛ける。
 セントも王子なのか。
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