汝、風を斬れ


 ドン

 何の音だ? とセントがふと右側を向いた。
 そして、プスという小さな音。
 セントの目が一瞬開き、首の左側を手で押さえる。
「どうした?」
 ジンが声を掛けるが、セントは答えずその体が大きく倒れる。
 膝が抜ける。瞼が重い。左の頸動脈のこと……。

 そして。
「「セント!!」」
 セントが、消えた。

 シュ、とジンの前を何かが掠める。
 針?
 その先には、キュア。
「姫!」
 ジンはキュアを庇うように覆い被さる。プス、とその針はジンの後ろ首に刺さった。
 そしてジンの瞼も程なく落ち、キュアを抱えた格好のまま、キュアもろともその場からまるで水が蒸発するように消えた。
「キュア! ジン!」
 王は叫ぶ。が、声が牢にこだましたきり、何も起こらない。
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