汝、風を斬れ


 ガシャン、と王子ファンイルのいる牢の鍵が開けられた。

「さすが、すごい効き目だな。ありがとうよ、スージェ」

 ロビン・スージェが牢に放られる。鉄色の髪に眼鏡の青年だ。学者であり、また才能を持った魔法使いでもある。

「ロビン、」
 ファンイルが駆け寄る。
「ファン様……」
「大丈夫か? お前、また薬を使わせられたのか?」
「申し訳ございません……私が洗脳剤を体に入れられているばかりに」
「言うな。この牢から出られれば、お前には妻がいる。解決することではないか」
「はい……」
「それより今は。何が起こったのだ?」
「ヴェルズ将軍より、セント・ソーザの弱点は聞いていました。左側の頸動脈。そこに移動魔法の掛かった睡眠薬を入れたのです。将軍は姫様とセント・ソーザを呼びたかったようですが……」

< 105 / 165 >

この作品をシェア

pagetop