汝、風を斬れ
しかし、返答はセントが刀を投げた方からした。
「危ないだろう、セント」
「親父……」
セントは刀を構える。
目の前に現れたのは、ヴェルズ・ソーザ。セントの父親。セントと同じ輝く緑色の髪、森の奥の色の瞳。国の軍隊を統べる地位にまで上り詰めた人。
にや、とヴェルズは笑う。ゾク、とセントの背中を気持ち悪い物が走る。
こんな笑い方をする人じゃない。もっと大きくて広くて、こんな人を馬鹿にしたような顔はしなかったはずだ。
「そうそう」
思わせぶりな口調で。
「お前の母親が余計なことを喋ったろう。否、余計ではないか。あれが真実だ。あの魔女、もう少し使えると思ったが。しかし我々の計画に反することだったからな、殺した」
セントの顔が強ばる。殺した?