汝、風を斬れ

 しかし、返答はセントが刀を投げた方からした。
「危ないだろう、セント」
「親父……」
 セントは刀を構える。

 目の前に現れたのは、ヴェルズ・ソーザ。セントの父親。セントと同じ輝く緑色の髪、森の奥の色の瞳。国の軍隊を統べる地位にまで上り詰めた人。
 にや、とヴェルズは笑う。ゾク、とセントの背中を気持ち悪い物が走る。
 こんな笑い方をする人じゃない。もっと大きくて広くて、こんな人を馬鹿にしたような顔はしなかったはずだ。

「そうそう」
 思わせぶりな口調で。
「お前の母親が余計なことを喋ったろう。否、余計ではないか。あれが真実だ。あの魔女、もう少し使えると思ったが。しかし我々の計画に反することだったからな、殺した」
 セントの顔が強ばる。殺した?
< 108 / 165 >

この作品をシェア

pagetop