汝、風を斬れ
「ころした…?」
「ああ」
 セントの思考が僅かに揺れた。
 それをヴェルズは見逃さない。

 目で追えない速さで移動し、セントに斬りかかった。セントは反射的にそれを避ける。
「親父、」
 再び斬りかかるヴェルズの刀を、セントは避けるのではなく自分の刀で受け止めた。

「俺は、父さんをずっと尊敬していた」
「それはそれは」
 キリキリと鋼と鋼がぶつかる。
「でも今の……今のあんたには尊敬する所なんて一切ない!」
 一度離れ、親子は構え合う。足が同時に床から離れる。
 
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