汝、風を斬れ

「言いたいことは、それで終わりか。オヒメサマ」
 刀を振りかざし、キュアを狙い振り下ろす。ジンがキュアを引き寄せて、それを免れた。
 セントはヴェルズの足を払う。不意を衝かれたヴェルズはその場に倒れた。

「カッ……」
 ドン、とヴェルズの鳩尾の辺りにセントは足を置く。ヴェルズの動きを制す。
 そしてやはり、いくつもの影が見える。
 これと、親父を切り離すことができたら。

「姫様、ジン」
 セントはヴェルズの周りに群がる物を見ながら言う。
「俺は、裏王家の王を斬ります」
「……我々を殺してどうする。生意気なことを言うな、若造が」
 その問いに、セントは笑って答えた。

「裏王家の血は男しか継がないって母さんから聞いた。もう俺とヴェルズ・ソーザだけなんだろ?」
 その言葉の意味をいち早く汲んだジンが言う。
「セント、お前……」

「ああ」

 セントは父親の顔を見た。刀を握り直す。
「そんなものは俺で終わりだ。じゃあな」

 セントはヴェルズ目がけて、真っ直ぐに刀を下ろした。


 爆風が、吹き荒れる。

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