汝、風を斬れ
結界は解かれる。解放された常駐兵の一人によって、ヴェルズの体に縄が打たれた。
「王家と裏王家は反目し合っていた……なぜ一つになろうとしなかったのだろう」
ヴェルズはそう言い残し、謁見の間を後にした。
ヴェルズの言葉でジンは合点がいった。
今の言葉がヴェルズの本心から出たのなら、セントとキュアをここに呼んだ理由はそこにあったのではないだろうか。二人を結ばせ、それを王や王子に認めさせることで、あるいは合法的に権力を握ることもヴェルズ・ソーザならば可能だったのではないだろうか。兵士は、どんなに技術や地位があっても、二十歳を過ぎなければ妻帯は許されない。それ故に、何年かの潜伏期間をおいてセントの成長を待ち、ヴェルズ、いや消された王達の遺志は計画を実行に移したのではないだろうか。
セントとキュア。
キュアの、セントへの思いは手に取るようにわかっていた。そしてセントの、キュアへの思いも先の態度でわかった。
「姫、セント」
ジンは自分の行為の意図が悟られないよう、努めた。自分には、姫の幸福が全てなのだ。
「私は、陛下や王子をお迎えに行く」