汝、風を斬れ

 そして、忘れられないの。

 恐ろしかったけれど、どこか楽しかった、逃亡の日。セントのいた日々。
 森の奥の色をした瞳、風に揺れる輝く緑色の髪。
 鍛えられた体、確かな太刀筋。
 優しさ故の厳しさ。
 唇の柔らかさ、熱い気持ち。


 ひときわ大きな歓声が、広場からあがった。
「何だろう」
「見に行きますか?」
 ジンが提案する。キュアは口の端をきゅっと上げて頷いた。

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