汝、風を斬れ

「…本当?」

 セントの顔が少年のように赤い。しかし、照れながらもはっきり言った。
「はい。声に出して言うのは物凄く恥ずかしいんだけど」

 キュアはその言葉の続きを待った。

「好きです」

 言ってしまってまた更に恥ずかしくなり、セントは次の言葉を探した。
「っあ、あの……そう、あれ、ジンはどうし……」


 ど……と鈍い音がした。
 セントはその場に崩れ落ちる。

「セント……!」
 うつ伏せに倒れたセントの背中、そのちょうど真ん中に矢が刺さっている。
 矢が飛んできたと思われる方向を見る。
 キュアは自分の目を疑った。
 距離があってはっきりはしないが、あの髪の色――ジンが弓を持って立っている。

「誰か!!」
 キュアの叫びに兵士は集まり、セントを取り囲む。キュアは場を離れ、セントの血が染みたドレスの裾を持ち、ジンの去った方へ駆けた。
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