汝、風を斬れ



 霞む視界からキュアが消えて行く。……。

「違う!」

 叫んで、セントは体を起こした。
「おい、セント!いきなり起き」「姫様は!?」
 物凄い剣幕だ。
「向こうに…誰かを追っかけているみたいに…」
「何」
 背中の傷はみるみる小さくなる。血液がまとわりついて気持ち悪い。

「クソ!」
 誰に対する罵倒か。

 立ち上がり、駆け出す。血液は固まり、砕けて散った。そして風に乗り、姫が向かったであろう方向へ流れる。セントはそれを辿った。



 ――違う、そいつはジンじゃない。






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