汝、風を斬れ
「おい」とレンが声を掛けると影から人が現れる。鎧をまとった、厳つい体の隣国の兵士の腕の中に
「姫」「姫様」
 ジンの方が一歩早く動き出す。そして渡された――気を失っているキュアをしっかりと抱えた。

「ジン様…」
 鎧の隙間から覗く瞳。懐かしい瞳だ。ジンは見上げた。何か言おうと口を開いたとき。
「行くぞ」
 レン王子から声がかかる。鎧の男はそっと顎をひいた。
「は……」
 ジンと、それを見ていたセントは、二つの背中を見送る。

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