汝、風を斬れ

 おやおや、眠ってしまったか。よく眠るものだ。いつまでも赤子のように。とにかく、さぁ。ご覧。

 私は促された方へ目を向けました。そこには、確かに素晴らしい宝物がありました。私は強く思いました。傍にあって、護りたい、と。
 私は隣の国の王様に頼みました。お願いです、お願いです。私の父にも母にも頼みました。祖母にも願いました。皆、首を縦には振ってくれませんでした。その時、私の袖を誰かが引きました。振り返るとたった一人の弟が立っていました。回りの大人達は顔を見あわせました。

 次の日、私は父に呼ばれました。父は私の意志を確かめ、言いました。護るだけだ、欲しいと思ってはいけない。私は大きく頷きました。父も頷き、膝を曲げて私と目線を合わせ、胸元から銀のペンダントを取り出し、私に掛けてくれました。
 ジン、お前の他の名前は、このペンダントにしまいなさい。開くのはここに戻って来た時だ。
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