汝、風を斬れ
ふぇ、とハンナがぐずり出した。
ヴェルズは抱きながら背中をポンポンと叩いてやる。すると、孫はキャハハと声を立てて笑った。
「すごい、父さん……」
照れながらヴェルズがハンナを返してきたので、サラは受け取る。やはり母親の腕が一番落ち着くのだろう、ハンナはにこにことしている。くりっとした目。深い緑色を映す。
「ニコイはおろおろするだけなのよ? あやすのも下手で」
そうだった、あの硝子職人の坊主がサラの夫だ。手紙で読んだきり、確か返事も書いていない。
「私はお前とセントの父親だぞ?」
言ってから気付いた。
サラはうつむく。その娘は母親の顔を不思議そうに覗く。ヴェルズはサラの肩に手を置いた。
「父さん……」
涙が、つーとサラの頬を走った。
「泣くな、覚悟が揺らぐ」
ヴェルズのその言葉は、誰に向けたものだろうか。
サラはセントから手紙を受けて、ヴェルズのこと、裏王家のこと(それは女系には効力がないこと)、セントの決断のことを知っている。明日、サラは父親と弟を失う。そして、裏王家は完全に絶えるのだ。
ヴェルズは抱きながら背中をポンポンと叩いてやる。すると、孫はキャハハと声を立てて笑った。
「すごい、父さん……」
照れながらヴェルズがハンナを返してきたので、サラは受け取る。やはり母親の腕が一番落ち着くのだろう、ハンナはにこにことしている。くりっとした目。深い緑色を映す。
「ニコイはおろおろするだけなのよ? あやすのも下手で」
そうだった、あの硝子職人の坊主がサラの夫だ。手紙で読んだきり、確か返事も書いていない。
「私はお前とセントの父親だぞ?」
言ってから気付いた。
サラはうつむく。その娘は母親の顔を不思議そうに覗く。ヴェルズはサラの肩に手を置いた。
「父さん……」
涙が、つーとサラの頬を走った。
「泣くな、覚悟が揺らぐ」
ヴェルズのその言葉は、誰に向けたものだろうか。
サラはセントから手紙を受けて、ヴェルズのこと、裏王家のこと(それは女系には効力がないこと)、セントの決断のことを知っている。明日、サラは父親と弟を失う。そして、裏王家は完全に絶えるのだ。