汝、風を斬れ


 夜半、兵舎。
 宛われた部屋で、月明かりの下、セントは愛刀を磨いていた。

 アンクス。
 お前はいつも俺を守ってきてくれたな。あの日から人を斬ることは減ったけど、まさか、不満じゃないだろ?
 俺達は風を斬って戦ってきた。なぁ、覚えているか? 父さんとあの幽霊みたいなのを切り離した時のこと……お前には俺の不安な気持ちが伝わったんだろ? 恐かったさ、あの時よりも。父さんを斬るなんて、恐くてできたもんじゃない。
ああ、お前のお陰だ。
 不思議だな。今は何も恐くないんだ。
 お前が斬るからか? なあ……。


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