汝、風を斬れ


「嫌です」

 はっきりと、目の前の口が言った。
「いて下さい」
「嫌です」
「いなさい」
「嫌です」
「いて」
「嫌です」
「生きて……」
 声は涙に消える。
「嫌です」
 キュアはセントの胸に崩れた。
「どうして……っ、どうしてセント……王家と裏王家は共存できるわ……」
 セントは図らずも父親と同じことを言った。
「泣かないで下さい……覚悟が揺らぎます」
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