汝、風を斬れ
「揺らげばいいのよ、そんな覚悟……」
 その言葉に、セントは反応した。キュアの腕を掴み、自分の顔を見させる。整った顔の眉を曇らせ、言った。
「そんなとは何だ! あなたは何も解っていない!」
 声は小さいのに、迫るものがある。

「俺は兵士だ、人を沢山斬ったし、殺した。何度も殺されかけた……人の死ってモノはもう嫌だ。でも俺が生きていたら、また、反乱を起こし兼ねない」
「あなたはそんなことしない」
「わからない、親父だって……まさか謀反を企てるような人だとは子供の俺だって思わなかった。剣は人を護るためにあるなんて建前だ。大き過ぎる力は何を為出かすかわからない。俺の中には、そんな血が流れている」

 セントはそこで言葉を切った。体の一番奥に仕舞ってあったものが出たのか、セントの小さな震えをキュアは感じていた。
「だから、俺は……」
「私を、置いていくの?」
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