汝、風を斬れ
キュアがセントの頬を撫でる。
「私はあなたが好きよ? あなたは森、私は湖。森が消えたら、湖は汚れていくだけだわ、セント」
キュアの腕を掴んでいたセントの手が、小さな狭い背中に回された。しっかりとキュアを抱きしめる。
「生きていると、どうしても欲が出る……あなたを欲しいと思ってしまう」
細く長い髪。かすかな花の香。
「ごめんなさい……私……」
その言葉は、塞がれた。
ゆっくりと唇が離れる。
「森は森だ……いつまでも湖を守る。だからあなたは生きて下さい。俺はあなたを助けた……キュア……」
キュアは頷いた。関止めるものはなく、涙が溢れる。
「ありがとう」
再び唇が重なる。
離れない。