汝、風を斬れ
「……お母様が」
 言葉が続かない。鼓動が速まる。
 父は、兄は。城は。城の中にいた者達は。一体、どうなっているのか。
 王女の動揺を嘲笑うかのように、夜は静かだ。雲のない空には、星が空高く輝いている。

 ふと、風下で鳥が啼いた。
 セントはそちらを向く。
 天幕の向こう、見えない暗闇を見つめながら、音もなく太刀を握る。
 前から三人、左右二人ずつ。ずっと後ろにジン。
「……セント」
 ジンの声が伝わる。
「ああ」
 返す。なぜ気付かなかったか。
「囲まれた」
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