汝、風を斬れ

「キャアァっ!!」
 群衆は後方の女性の悲鳴に振り返った。
 そこにも輝く緑色の髪をした人間が、太い刀を胸に刺し、血を出して倒れている。

 少し前。
 セントは父親の遺言を聞きながら、呪文を唱えていた。痛みを消す言葉である。アンクスにも魔法を掛けた。自分の左胸に確実に刺さるように。

 ヴェルズの首が飛んだ瞬間、ジンは人混みの中を、セントを探して歩いていた。セントの部屋に伝声機は置いたままになっていた。女性の悲鳴、ジンはその先へ急いだ。

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