汝、風を斬れ
なんと美しい死に様だろう、ジンは思った。
肌の色は生きている人のそれで、整った顔の口元は一筋の血を流しながらも優しく微笑んでいる。兵を率する者に与えられる白い軍服は深紅に染まった。そして、紅い血に染まらない輝く緑色の髪。
ジンは駆け寄ってその傍に座った。ズボンが温かい血を吸う。首に手を当て、それがもう生きてはいないことを確かめた。森の奥の色をした、もう動かない瞳。そっと瞼を閉め、口元の血液を布で拭う。
左胸に突き刺さった彼の愛刀を引き抜く。緻密な装飾が施された刀は、主から抜き終わると一瞬にして錆びた。セントの魔法か、刀の意志か。
キュアは外を見ていた。思わず知らず、左手が唇を触った。
窓から心地良い風が入り、キュアの淡青の髪と緩く結ばれた黒く細いリボンを靡かせる。胸元と袖口、裾に配われた黒いレースと、髪に付けたものと同じリボンがそこここで控え目にこの黒いドレスを飾っていた。
人が来る。城門へ繋がる道を、多くの民衆が歩いている。その先頭には、セントを背負ったジン。
キュアは外へ駆けた。
城の中にいた者も、この騒ぎに外へ出た。王や大臣達もバルコニーへ出る。