汝、風を斬れ
 ジンはセントの遺体と共に城門へ登った。

「勇者は」

 門の上、見張りの為の高楼でジンは開口した。
 門の外には多くの民衆。門の中には城の者。そしてより高い所に王と王子、大臣達。
「勇者は死んだ。私は彼と共にあの謀反を過ごした。私が見たこと、知ったこと、考えたことを述べる。ここにいる全ての方に聞いて頂きたい」

「あ、姫様お止め下さい」「通しなさい!」
 キュアは門番を振り切り、高楼を駆け上がる。
「セント……」
 姫の登場にそこにいた全員が驚いた。
 淡青と黒の相まった美しい――喪服姿。 
「姫と私は、彼がいなかったら死んでいただろう……」
 ジンはセントをその場に寝かせた。手を胸の上で組み、錆びた刀を持たせる。じきに固まってしまう。キュアがその傍に座る。群衆からは見えなくなる。静かに涙が頬を濡らした。ジンは立ち上がって語りを進める。
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