汝、風を斬れ
 バサッ、バサッと天幕が斬り破られる。速やかにセントは王女の前に立ち、言う。
「姫様」
 返事をしようとしたが、先の動揺と今の混乱で喉が渇き、腰が立たない。ただ、その広い背中に全てを託すしかなかった。
 前に立つその人は、僅かに振り返る。

「心配しないで下さい」
 体を敵へ向ける。刀を握る手に力を入れる。
「あなたは、俺が護ります」

 森の奥の色をした瞳に光が灯る。
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