汝、風を斬れ
目の前には、広い広い海。
白い砂浜に波が打ち寄せては引く。
「スー」
スーは静かに浜へ進む。
「ジン…どうして海の向こうがあんなに明るいの?」
背中越しだが、ジンが微笑んだ気がした。
「太陽が昇るんです」
「太陽が…」
スーを止め、ジンはとんと降りた。キュアも降ろして、スーから馬具を外す。鼻筋を撫で、体をぽんと叩くと、スーは嬉しそうに浜を駆けていった。
キュアはずっと海を見ている。海から吹く風が、淡い青色の髪をなびかせる。
空が赤みを帯びる。水平線に沿って、光りが走った。日が昇る。
「何で、泣いてるんですか」
後ろから声を掛けられて、キュアは思わず振り向いた。ジンの声ではない。
「……どうして」
深い色の瞳を眩しそうに細めて、その人は何を思ったか裸足になった。ズボンの裾を膝まで捲くり上げ、海に入った。
「冷たっ」
カラカラと笑う。
輝く髪が、生まれたばかりの光に透ける。
「海なんて始めて入ったよ。姫様も来ますか」
姫様、なんて。
「セント」