汝、風を斬れ
 ところで、この葉はサミという常緑樹の葉である。サミの葉は、何にでも効く万能薬で、その樹液に茹でた葉を擂ったものを混ぜれば、打ち身や打撲などに膏薬として使えるし、煎った葉を白湯と飲めば、軽い頭痛や腹痛はたちどころに治ってしまう。

 その用途の中で「生」はない。いや、あるにはあるのだが、生は、あまり強いのだ。凡人に使えば、かえってショックを与えてしまうほど。

 しかし、その心配は無用だった。
「にっ……がい」
 跳ね起きたその姿を見て、ジンは苦笑した。

「たいしたものだ。お前も、生のサミの葉も」
 それを聞いてセントの顔が青くなる。
「生のサミって……てめえ……俺を殺すつもり」

「セント」
 割って入ったのは、僅かに震えた声。少しあどけない。
「姫様……」
 潤んだ大きな眼差しが、真っ直ぐにセントを捉える。
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