汝、風を斬れ
「ジン」

 しばらくの沈黙の後、姫が先に口を開いた。

「セントはどうなったの?」
「……わかりません」

 そう、解らない。ジンはそれ以上を答えることが出来ない。この男は、本当に自分たちの味方なのか。先の戦いで何かあったのか。姫はきっと目を瞑って震えていただけだろうから、解らないはずだ。知っているのは、そこに死んだように倒れている男だけ……。
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