汝、風を斬れ
「すぐに森を抜けられそうだ」
「お前」
「セント!」
ジンの言葉を遮って、王女がジンに近づく。そしてその一歩前に出る。
「大丈夫、なの?」
細い腕が、セントの頬へ伸びる。
「姫!」
ジンは王女の腰を掴み、セントから引き離す。
「セントに近づかないで下さい。この男は昨晩あなたを襲い、殺そうとした。お忘れではないでしょう」
「は?」
セントの目が驚きに開く。
「殺そうとした? 俺が、姫様を?」
「覚えていないのか?」
ジンの声が低く問う。普段は穏和で優しい瞳が、鋭くセントを睨んでいる。
「セント……」