汝、風を斬れ
森の出口付近でセントは止まった。伝声機で言葉を交わし、ジンとはここで落ち合うことにした。若い木々の向こうには、商人の町、ヴァーンが広がる。石畳の街道が東西南北に走り、そこから固い土の道が細かく枝分かれしている。城に近いせいもあり、人通りがとても多い。そう、普段は。
セントが小さく呪文を唱えると、球体がはじけて消えた。中にいた姫は、人の頭の上の高さ程から落ちる姿勢となるが、セントが抱き抱える形で受け止められた。結果、嫌でも体が触れ合ってしまう。
そっと姫を下ろす。
「ありがとう、セント」
「いえ。姫様、昨晩のことは、その……」
覚えていない。
もういいの、と姫は首を横に振る。
「あなたは私を助けてくれた」
そして視線を空へ移した。風が淡青の髪を靡かせる。
セントが小さく呪文を唱えると、球体がはじけて消えた。中にいた姫は、人の頭の上の高さ程から落ちる姿勢となるが、セントが抱き抱える形で受け止められた。結果、嫌でも体が触れ合ってしまう。
そっと姫を下ろす。
「ありがとう、セント」
「いえ。姫様、昨晩のことは、その……」
覚えていない。
もういいの、と姫は首を横に振る。
「あなたは私を助けてくれた」
そして視線を空へ移した。風が淡青の髪を靡かせる。